駒澤大学の陸上部は全寮制で、上級生と下級生の2人が6畳1間で生活をする。
上下関係は厳しいので、先輩がマザーテレサ級の聖人じゃないと、同部屋の後輩は怒られるイベントが多発する事になる。
俺は怒られやすい遺伝子が骨の随まで刻み込まれているから、その体質もあいまって超絶ハードモードに自動変更されていた。
どこの世界でもそうやろうけど、新入りの一年生が先輩や上司の意見を否定するのはなかなか難しい。
よってその先輩や上司の指令が間違っていても、いったんは実行して間違った方向に爆進する事になる。
俺もその1人だった。
異常に近い歯ブラシの位置
俺の同部屋の先輩は、歯ブラシを置く位置にこだわりがあったみたいで
「歯ブラシもっと右に置けや!」
とよく注意されていた。
冷蔵庫の上に先輩と歯ブラシを置いてたんやけど、先輩の命令通り「もっと右」に置いてしまうと、先輩の歯ブラシとくっついてしまうので、これは俺的に避けたい。
と言うか先輩も避けたいはずなのに、なぜか「もっと右やろ!」と自分の歯ブラシに寄り添う事を要求してくる
ブラシ部分が触れ合う
と言う最大のリスクさえ伝える事ができず、先輩の歯ブラシの横にぴったり置くのが部屋のルールだった。
先輩の歯ブラシがピンクで俺が水色だったので、同棲カップルみたいになっており、この景観が俺の精神をささやかながら蝕んだ。
同棲カップルの配色も嫌やったけど、同色の歯ブラシになった時は俺の精神をかつてないほど蝕んだ。
間違って使うリスクの観点からも遠ざけたい。
と言うなかなんで横に置いてるのか理解できない。
と言う思いは爆発寸前だったが、
歯ブラシの位置で何回もキレられてる俺としてはそんな提案する事は難しく、仕方なくまたぴったり横に置く。
歯ブラシ使う度に
「これ俺のだよな・・・」
と疑心暗鬼になりながら使い、精神をすり減らした。
先輩が歯ブラシを使う時も
「俺の使ってないよな・・・」
と横目で確認していた。
歯ブラシが同色やった期間は本当に毎日が刺激的だった。
今思えば、娯楽が少ない寮生活において、ちょっとした楽しみを先輩が提供していてくれたのかもしれない。
10年以上の時が経って、
今はもう普通に会話できるようになったと信じて、先輩に聞きたい。
何であんなに歯ブラシ寄り添う事を要求してきたのか。
俺の事が好きだったのなら、嫌そうな態度を取った事を謝りたい。
もう時効なので教えて欲しい。
寮生活は楽ではなかったけど、糖質300%くらい甘かった俺にとっては良い社会勉強になったように思う。
あの時は先輩と楽しく話したりはできなかったけど、よい大人になった今もう一回会って話してみたい。
陸上部時代の甘く苦い思い出はこちらから
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